登山用インナー(アンダーウェア)の選び方|必要な機能と素材の違いを解説

2024.10.10

登山では、汗の処理を怠ると低体温症になるおそれがあるため、インナーを着ることが重要です。

ただし、適切な素材のインナーを着用しないと、汗冷えによる低体温症に陥るリスクが高まるため、選び方に注意が必要です。

本記事では、登山用インナーの選び方を季節別にわかりやすく解説します。身体の調子を崩さないためにも、素材がもつ機能を理解し、季節や標高にあわせて適切なインナーを選びましょう。

インナーの役割や必要な機能、素材の違いも紹介しているので、快適で安全な登山に向けての参考にしてみてください。

登山用インナー(アンダーウェア)の役割

登山用のインナーは、レイヤリング(※)のうち肌に直接触れるベースレイヤーの衣服で、汗を吸いとり蒸発させ、肌をドライに保つ役割をもちます。

インナーを着用せず汗で肌が濡れたまま放置すると、身体が冷えてしまい、判断力の低下を招くことがあります。ひどいときは、低体温症に陥ることもあるため危険です。

体温深部が35℃未満になる低体温症 に陥ると、激しい震えや意識障害が起こり、最悪の場合死に至ることもあります。

安全で快適な登山のためには、インナーを着用して汗を処理し、身体の冷えを防ぐことが大切です。

インナーのなかには、汗を吸わない素材や機能が不十分なものもあるため、購入前に登山に適した素材と機能が備わっているのかしっかり確認しましょう。

※ レイヤリング とは、登山の服装で重ね着のことを指します。山は天気・気温の変化が激しいため、都度調整できるよう衣服を重ね着するのが一般的です。
大きく次の3つのレイヤーがあり、登山用インナーはベースレイヤーにあたります。

・ベースレイヤー:肌に直接触れる衣服(インナー、下着)
・ミドルレイヤー:ベースレイヤーの上に着用する衣服(Tシャツ・スウェット・ニットなど)
・アウターレイヤー:外気から身を守るために着用する(レインウェアなど)


登山の服装については、下記の記事で詳しく解説しています。併せて、ぜひご覧ください。

関連記事:登山の服装の基本は?季節ごとの着こなしを初心者にもわかりやすく紹介(準備中)


登山用インナー(アンダーウェア)に必要な4つの機能

登山用インナーに必要な機能は、4つあります。

●   1.吸水速乾性
●   2.保温性・防寒性
●   3.伸縮性
●   4.抗菌・防臭

インナーを選ぶ際は、機能が十分備わっているかどうかを確認しましょう。

1.吸水速乾性

登山用インナーにもっとも必要な機能は、汗を吸いとる吸水性と汗が乾きやすい速乾性です。

吸水性があっても速乾性がなければ、身体が湿ったままになってしまい体温を奪われるため危険です。夏は、蒸れる原因にもなります。

吸水速乾性の高い素材を使った登山用インナーを選ぶと、体の冷えや蒸れを防ぎ、快適に過ごせるでしょう。

2.保温性・防寒性

山は、標高100mごとに気温が0.6℃下がるといわれており、夏の低山以外は保温性・防寒性が備わったインナーが必要です。

低山や高山は明確な定義はありませんが、標高によって季節の進み方や気温がまったく違うため、都度気温を確認し適切なインナーを選びましょう。

たとえば、同じ北海道でも地域や標高によって、以下の差が生じます。

2024/06/29の気温 

北海道札幌市

藻岩山(531m)

北海道苫小牧市

樽前山(1,041m)

北海道美瑛町

トムラウシ山(2,141m)

最高

最低

最高

最低

最高

最低

山頂

26℃

18℃

20℃

15℃

16℃

10℃

登山口

27℃

19℃

22℃

16℃

25℃

16℃

ふもと

31℃

18℃

28℃

15℃

33℃

15℃


ふもとの気温が30℃台でも、山頂が10℃台であれば、インナーに保温性・防寒性が備わっていないと、対策としては不十分といえます。

寒い時期や高山では、保温性・防寒性のあるインナーを選びましょう。

3.伸縮性

登山中の動きやすさを確保するため、インナーには伸縮性のある素材を選ぶ必要があります。伸縮性のないインナーは、身体の動きを制限するため登山には不向きです。

購入する際は、インナーを両手でもち、左右に引っ張って十分伸びるかどうかを確認しましょう。

4.抗菌・防臭

登山中は冬でも汗をかくため、なるべく抗菌・防臭性が高いほうが快適に過ごせます。

長時間着用する際はとくに、抗菌・防臭性があるインナーを選びましょう。


登山用インナー(アンダーウェア)に適している3つの素材

登山用インナーに必要な機能をもつ素材は、大きく分けて3つあります。

1.   化学繊維|ポリエステル
2.   天然繊維|ウール・メリノウール
3.   ハイブリッド

それぞれの特徴を押さえておくと、季節や気温に応じて適切なインナーを選べるようになるので、参考にしてみてください。

1.化学繊維|ポリエステル

ポリエステルなどの化学繊維は、速乾性に優れています。 汗を乾かしてくれるため、肌をドライに保つことが可能です。汗冷えや蒸れを抑え、快適な登山をサポートしてくれます。

化学繊維は、使用している糸や織り方によっても、触り心地や機能性が変わるため、実際に触れてみてから購入するのがおすすめです。

たとえば、独特な繊維形状をしたポリエステルで編んだ生地は「毛細管現象」を起こし、水分を吸うと生地全体に広がる性質をもちます。水分が広範囲に染み渡ると、空気に触れる面積も広がり、乾くスピードが速くなるのです。

ナイロンも化学繊維ですが、防風・防水性に優れており、肌に触れるベースレイヤーよりも外気に触れるアウターレイヤーに向いています。

BRINGが提供する『DRYCOTTONYシリーズ』は、ポリエステル100%で高い吸水速乾性をもちます。化学繊維とは思えない綿のような肌触りが特徴で、伸縮性にも富んでいるため、登山におすすめです。

DRYCOTTONY PRODUCT

White

2.天然繊維|ウール・メリノウール

天然素材のうち、ウールやメリノウールは 保温性に優れているため、高山や冬の登山に適しています。

メリノウールとは、 ウールを生産するために品種改良された羊であるメリノ種からとれた素材です。繊維表面に撥水性があり、肌に水分が触れないため 、汗冷えを防ぐ機能があります。保温性はもちろん、天然の抗菌作用による防臭効果も期待できるため、登山に適しているのです。

ウール・メリノウールは 化学繊維と比較するとお値段が高い傾向がありますが、快適な登山をサポートしてくれる素材であるといえるでしょう。

綿(コットン)は避ける

綿(コットン)は吸水性が高い一方、乾きにくい性質があるため、登山用インナーには不向きです。とくに、綿100%素材は避けたほうがよいでしょう。

ハイブリッド素材のなかに、多少含まれる分には問題ありませんが、配分が大きすぎると機能性が落ちる点に注意が必要です。

長時間の着用が必要な場合や気温が変わりやすいシーズンは、汗冷えの原因となるため、ほかの素材を選びましょう。

3.ハイブリッド

ハイブリッドは、化学繊維と天然素材の混合タイプです。それぞれのよさを併せもっているため、機能性が高い特徴があります。

乾きやすさと保温性を兼ね備えている製品が多く、気温が低いシーズンや高山で効果を発揮するはずです。

さまざまな種類があるので、季節や標高などの条件にあわせて選ぶとよいでしょう。

ハイブリッドは「WUNDERWEARシリーズ」がおすすめです。

『WUNDERWEARシリーズ』は、再生ポリエステルとメリノウールのハイブリッド素材です。化学繊維と天然繊維双方のメリットをもち、登山用インナーとして必要な保温性・伸縮性を備えています。 また、洗えるウールを使用しているので、家庭用洗濯機で簡単に洗濯できます。ベースレイヤーとしても、ミドルレイヤーとしても活躍する点も魅力です。


【季節別】登山用インナー(アンダーウェア)の選び方

必要な機能をもとに、季節ごとに適した登山用インナーの素材を表にまとめたので、選ぶ際の参考にしてみてください。季節ごとに適切なインナーを用意すると安心です。

素材

低山

高山

(6~8月)

(12~2月)

春・秋

(3~5月

・9~11月)

(6~8月)

(12~2月)

春・秋

(3~5月

・9~11月)

化学繊維

(ポリエステル)

天然繊維

(ウール・メリノウール)

ハイブリッド

中腹や山頂は、標高によって気温と天気が違うため、平地の気温で判断しないことが大切です。

積雪期や高山では、保温性の高いインナーだけで防寒するのは難しいため、各レイヤーの服装も含めて総合的に調整しましょう。

夏(6~8月)に適したインナー

夏(6~8月)は、吸湿速乾性に重点を置いてインナーを選びましょう。ポリエステルやメリノウール、夏用のハイブリッドタイプなどがおすすめです。山頂の気温が低すぎないようであれば、半袖のインナーでも問題ありません。

『DRYCOTTONY Sleeveless T-shirt』は、吸水速乾性に優れたポリエステル100%のインナーです。スリーブレスで、肩や腕の可動域が広く、動きやすい特徴があります。シンプルなデザインで、オールジェンダーに対応しており、どなたでも気軽に着用いただけます。

 

なお、夏でも標高が高くなるたび、気温が下がる点には注意が必要です。インナーの上に、夏用のミドルレイヤーを着用するとよいでしょう。

ハーフパンツで肌を露出せず、虫対策としてレギンスや丈の長いパンツを着用するのがおすすめです。

以下の記事では、登山用パンツについて詳しく紹介しているので、参考にしてみてください。

関連記事:登山パンツの選び方!普通のパンツとの違いや季節ごとの着こなしを紹介

冬(12~2月)に適したインナー

冬(12~2月)は、保温性・防寒性に優れたインナーを選びましょう。メリノウールや冬用のハイブリッドタイプがおすすめです。

『WUNDERWEAR "ONE"』は、再生ポリエステルとメリノウールのハイブリッド素材で、保温性に優れているインナーです。生地全体が無縫製の一体型で、どのような体型でも締めつけ感なく着用いただけます。
ズレを気にせず着用したい方には『WUNDERWEAR』がおすすめです。

登山家の吉田智輝さんに、標高6,190mを誇る北米大陸最高峰デナリの登山で『WUNDERWEAR "ONE"』の70/30(ポリエステル70%/メリノウール30%)をお試しいただきました。登頂成功のインタビューと併せて着心地の感想を紹介しているので、ぜひご覧ください。

参考記事:INTERVIEW03 “海抜0mから七大陸最高峰登頂” 前人未到の偉業に挑む冒険家 | 吉田智輝

『WUNDERWEAR CREWNECK』は、ウールを70%混紡した再生ポリエステルとのハイブリッド素材で、冬場の登山でも身体の熱を逃がさずキープします。ベースレイヤーとしても着用いただけますので、冬のインナーとしてご検討ください。

なお、冬の登山で低体温症を防ぐためには、ミドルレイヤーやアウターレイヤーの防寒性も考えなければなりません。

以下の記事では、登山用ウェアの選び方を解説しているので、参考にしてみてください。

関連記事:登山ウェアの種類と選び方!おしゃれに着こなす4つのコツを紹介(準備中)

春・秋(3~5月・9~11月)に適したインナー

夏(6~8月)は、吸湿速乾性に重点を置いてインナーを選びましょう。ポリエステルやメリノウール、夏用のハイブリッドタイプなどがおすすめです。

春・秋(3~5月・9~11月)は、地域や登る山の標高、積雪量によって気温が大きく変わるため、状況にあわせて選ぶことが大切です。

夏に近い春や秋のはじめの低山などは、夏寄りのインナーでもよい場合があります。寒さ対策が必要な場合は、冬寄りのインナーを選びましょう。

春・秋で防寒性を少し高めたい場合は、登山用レギンスの着用がおすすめです。

以下の記事では、登山用レギンス(タイツ)について詳しく解説しているので、併せてご覧ください。

関連記事:登山用レギンス(タイツ)の選び方|役割と種類、必要な機能と適した素材から解説



登山用インナー(アンダーウェア)を選ぶ際によくある質問

登山だけでなく日常でも着用できるアパレルブランドBRINGが、登山用インナーを選ぶ際、よくある質問に回答します。

長袖と半袖どちらがよいですか?

登山用インナーは、季節や気温に応じて半袖と長袖を使い分けます。夏の低山を登る際は、半袖でも問題ありません。

ただし、半袖のインナーの上に長袖のミドルレイヤーを着る場合、インナーが密着している二の腕部分だけ冷えるおそれがあるため、吸水速乾性の高い素材を選ぶのがおすすめです。

虫刺されを予防したい場合は、長袖の登山用インナーの上に半袖のミドルレイヤーを着用するとよいでしょう。

メッシュ素材でもよいですか?

メッシュ素材でも問題ありませんが、吸水速乾性と密着性の高いインナーを上から着るのがおすすめです。

メッシュ素材は、通気性・伸縮性に優れており、登山用インナーとして増えている素材です。しかし、撥水性の高い素材が使われていることも多く、吸水性が高くないという特徴があります。

メッシュ素材のインナーのみだと、汗冷えを引き起こすおそれがあるため、汗を吸わせるためのインナーを用意する方がベターです。

インナーソックスは必要ですか?

登山では、ソックスを重ね履きするケースもありますが、最近のソックスは機能性が高いため、インナーソックスを履かなくても問題ありません。

ただし、最近では疲れを軽減するサポート機能をもつ製品もあるため、一概に必要ないとはいい切れません。

以下の記事では、登山用ソックスについて詳しく解説しているので、ぜひご覧ください。


関連記事:登山用ソックスの必要性と重要な役割|選び方の6つのポイントも紹介(準備中)


まとめ:適切なインナーを選び安全・快適に登山を楽しもう

登山では、季節を問わず汗をかくため、身体の冷えを予防するためにインナーの着用がおすすめです。

肌が濡れたまま登山を続けると、低体温症になるおそれがあるため、適切なインナーを選んで、肌をドライに保つ必要があります。

登山用インナーは、季節だけでなく、登る山の標高や積雪量なども踏まえて、必要な機能をもつ素材から選びましょう。

BRINGでは、夏場の登山におすすめの速乾性に優れた『DRYCOTTONYシリーズ』、冬場の登山におすすめの保温性が高い『WUNDERWEARシリーズ』を提供しています。登山用インナーに必要な機能を兼ね備えた製品ですので、ぜひお試しください。

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