INTERVIEW03 “海抜0mから七大陸最高峰登頂” 前人未到の偉業に挑む冒険家 | 吉田智輝

2023.6.23

海岸線から山頂を目指す「SEA TO SUMMIT」という方法で、セブンサミット(七大陸最高峰)登頂に挑戦中の吉田智輝さん。20235月には、49日間、距離420kmの大遠征の末、北米大陸最高峰「デナリ」の登頂に成功した。

吉田さんのセブンサミット登頂記録

■オーストラリア大陸最高峰コジオスコ(標高2,228m、距離218km6日間) 

■ヨーロッパ大陸最高峰エルブルース(標高5,642m、距離611km21日間) 

■アフリカ大陸最高峰キリマンジャロ(標高5,892m、距離466km17日間) 

■南米大陸最高峰アコンカグア(標高6,961m、距離278km22日間)

■北米大陸最高峰デナリ(標高6,190m、距離420km、49日間)

BRINGは本プロジェクトのサポーターとして、デッドストックを再利用し、オリジナルデザインの速乾性コットンタッチTシャツを作成した。遠征前に行われたクラウドファンディングでは、リターンとして支援者に送られている。

今回は、帰国直後の吉田さんを世界最速インタビューを行い、デナリ登頂時のエピソードや、「SEA TO SUMMIT」にかける想いを伺った。

デナリへの大遠征、順調に進んだのでしょうか。

 

吉田 山頂まで49日間というのは、今までで一番長い道のりでした。海から歩き始めて、最初の方は街中の宿に泊まるのですが、今回そのパートは5日間と短く、その後はほぼテント泊でアラスカの大自然の中を移動しました。標高2,200mのところにあるベースキャンプまでは、21日かかっています。デナリ登山のベストシーズンは5月末~6月初め。僕らはその二か月前くらいに入っているので、寒いし、風が強いし、天候が不安定な中、とにかく待ち続けてアタック(山頂への到達を目指すこと)のタイミングを見計らっていました。なかなか天候が良くならず、食料が尽きかけたときにようやく、山頂まで登ることができました。

普通はベースキャンプまでセスナで飛ぶんですよね。

 

吉田 ベースキャンプまでの道のりは、木が生い茂る獣道です。クマに出くわすこともあります。今回、ベストシーズンより少し早く山に入ったのは、木々が雪の下に埋まっていて、クマも冬眠している時期を狙ったからです。

クレバスという氷河の裂け目が多いエリアもあります。その深さは30m以上。途中、パートナーの一人がクレバスに落ちてしまい、ひやっとしました。穴に向かって呼びかけても反応がなくて。ロープでそれぞれの体を繋いでいたので、それを引っ張って上げると、穴からひょっこり出てきました。クレバスの中では音が全く聞こえなかったようですが、本人は平気だったみたいです。僕もその後に4回ぐらい、片足だけズボッズボッとはまってしまい、パートナーと協力しながら切り抜けました。みんなで探り探り進んでいく感じで、本当に冒険的でしたね。

一緒に登った2名のパートナーの方は、どんな方たちだったのでしょうか。

 

吉田 一人は、今僕も住んでいる長野県信濃町で出会った渋沢暉さんです。以前デナリに登った際、ベースキャンプからセスナに乗って下山する時に、この森の中を歩いたら面白いだろうなぁと思ったそうです。それはまさに僕がやっていることなので、意気投合して一緒に行こうとなりました。もう一人は、北海道に住んでいる舟生大悟さんという方で、冬の北アルプスを単独で、食料などを全て背負って、27日間かけて縦走したツワモノです。経験豊富な二人に、いろいろと教えてもらいながら登った感じですね。

いつもは海から山の近くまでは一人で歩くことが多いのですが、今回は3人とも海から歩き始めました。喧嘩することもなく、楽しく登り切りました。テントでは麻雀で遊んだりしていましたよ。

海から山に登るという方法に、共感される方もいらっしゃるのですね。吉田さんが「SEA TO SUMMIT」プロジェクトを始めたきっかけはなんだったのでしょうか。

 

吉田 ヨーロッパ大陸最高峰のエルブルースについて調べていた時に、あと400mで山頂というポイントまでリフトと雪上車で上がれるという記事を読み、「自分のやりたい方法とは違うな」と違和感を抱いていました。そんな時、エベレストを海から登ったオーストラリア人の登山家ティム・マッカートニー=スネイプさんのことを知ったんです。ティムさんは、ベンガル湾から登り始めて、ガンジス川を泳いで渡り、1200kmの道のりを経て頂上に辿り着きました。それがすごく面白くて魅力的に感じたのです。それになんと、ティムさんがエベレスト登頂を達成した日が、まさに僕の誕生日で。「これだ!」と思いましたね。セブンサミットと「SEA TO SUMMIT」を組み合わせたら世界で誰もやっていないし、これをプロジェクトにしようと決めました。

 

登山というより、冒険という感じですね。

 

吉田 登山あり、旅あり、冒険あり、のプロジェクトです。

実は、日本には昔から「海から登る」という登り方がありました。山岳信仰の世界で1300年前くらいから行われていて、海で身を清めて、そこから信仰の対象である山に向かって歩くというものでした。

国指定重要文化財「絹本著色富士曼荼羅図」:田子ノ浦で「塩垢離」(禊)をして、

浅間大社郡を里から山腹、頂上まで巡る登拝者(修験者)たちの姿が描かれる。

東北のお祭りで、漁師さんが海から海水を山まで持っていくという習わしも1300年ぐらい続いていたりします。それはまさに「SEA TO SUMMIT」ですよね。全国のいろいろな山を海から登る、イベントみたいなことはいつか仲間を集めてやってみたいです。

 

セブンサミット達成まで残り2つとなりました。次の挑戦はいつ頃を考えていますか。

 

吉田 エベレストのベストシーズンが5月なので、3ヶ月の行程を踏まえて、来年の2月頃に出発できたら良いなと思っています。もう1年もないので、資金調達次第になりますが...。ニュージーランドの登山家で同じく「海抜0mからの七大陸最高峰登頂」に挑戦している方がいるので、せっかくならその方より早く、世界初で達成したいです。

今回のデナリ遠征では、BRINGWUNDERWEARシリーズのアイテムを着用していただいたとのことですが、着心地はどうでしたでしょうか。

 

吉田 パンツは、WUNDERWEAR “ONE”70/30(メリノウール 70% / 再生ポリエステル 30%)を一度も洗うことなく履いていました。縫い目がないため、すごく動きやすかったです。

ウェアは、ポリエステルのドライレイヤーを着て、その上にWUNDERWEARHOODIELEGGINGSを着ました。これもベースキャンプから着替えることなくずっと着ていましたが、HOODIEの首元が少しよれたくらいで、破れたりはしなかったです。メディカルキャンプに建てたイグルー(ブロック状にカットした雪を積み上げて作るドーム型簡易住居の中はマイナス10℃くらいでしたが、トップスはこれ一枚でも十分暖かかったです。フードがある分、首元も温まりました。

吉田さんが着用したアイテム

¥5,280〜

Sold out
Sold out