今回インタビューを行ったのは、「ウソツキ」「あいのデータ」「Tattoo」などの人気曲で知られる3人組音楽グループWHITE JAMのメンバーである、NIKKIさんです。
INTERVIEW14 エンターテインメント×サステナブルの挑戦。オタクのみんなと、一歩ずつ進めるSDGs。| NIKKI(WHITE JAM)
2025.2.26
NIKKIさんは、2022年より、「オタ活でSDGs」のプロジェクトをスタート。様々な企業とコラボレーションした商品開発や、SDGs、サステナブルに関する情報発信を行ってきました。BRINGとはプロジェクト開始直後よりライブ会場での衣類回収を実施し、コラボレーションアイテムも発売しました。
今回のインタビューでは、NIKKIさんが「オタ活でSDGs」を始めた理由や、エンターテイメントの世界で活躍するアーティストとして、どのように社会問題に取り組んでいこうと考えていらっしゃるのかなど、プロジェクトに関するいろいろなお話を伺っています。
オタクの力で社会貢献!「オタ活でSDGs」プロジェクトのはじまり。
― NIKKIさんが、サステナブルやSDGsに興味を持ったきっかけはなんだったのでしょうか。
NIKKI コロナ禍で自宅での時間が増えた時に、この時間を有効活用して、何かを勉強したいと思ったんです。そこで目に入ったのが「SDGs」や「サステナブル」という文字でした。元々ファッションが好きだったのですが、当時いろんなブランドがサステナブルに力を入れ始めていて、それを取り上げる記事が増えていました。それを見て興味を持ったのが最初のきっかけです。
NIKKIさんの勉強ノート。
― その後どのようにして「オタ活でSDGs」の活動に繋がっていったのですか。
NIKKI コロナ禍って音楽業界がピタッと止まってしまった時期だったんですよね。アーティストが活動休止したりとか、ツアーが無くなったりとかして…。それに伴って応援していたオタクの子たちが、オタクを辞めてしまうことも多かったと思います。そんな時、たくさん持っていたアーティストのグッズやTシャツはどうするのだろうと、疑問に思ったんです。ちょうどSDGsやサステナブルについて勉強している時だったので、みんなが持っていたものをリサイクルして、新しいものに変えることが一緒にできないかなと思い、立ち上げたのが「オタ活でSDGs」です。
ただ、私がいきなりSDGsを始めますと言っても、私自身がそうだったように、「SDGsって何だろう?」と思う人が多いのではないかと思いました。そこでまず、みんなに興味を持ってもらえるようなウェブサイト作りから始めました。ウェブサイトでは、どうして私がこれを始めたのか、このプロジェクトがどういうものなのか、できるだけ丁寧に伝えるようにしています。とにかく、サイトを見て、初めに目につく言葉を大事にしたくて、一番伝えたいことは大きく、目立たせるようにしました。
「オタ活でSDGs」ウェブサイト(https://www.otakatsu.love/)より。
Tシャツ、タンブラー、財布など、身近なものから始めるSDGs。
― 「オタ活でSDGs」の活動として、最初に取り組まれたのが衣類回収だったのですね。
NIKKI ファンのみんなが生活の中で身近に感じるものといえば、やっぱり衣類なのかなと思いました。アーティストのグッズとして買うことも多いですし、自分の生活の中で、これなら参加できるかなと、イメージを持ってもらいやすいものだと思います。何社かコラボレーションの打診をさせていただいたのですが、BRINGさんからはすぐに前向きなお返事をいただき、とても嬉しかったのを覚えています。
― アーティストのNIKKIさんご本人からメールが来たときは、私たちもかなり驚きました(笑)。ファンの方々からの反応はいかがでしたか。
NIKKI 正直、みんなハテナが浮かんでいる状況だったと思います。でも分からないことも、応援している好きな人が発信していると、それについてもっと知りたくなるし、自分も一緒に取り組みたいと思うのがファンの心理なんですよ。新しい発見や学びの入り口として、エンタメはすごく良いなと改めて思いました。
それとBRINGのTシャツをボディにしたグッズは、ファンの方にもとても好評でした。洗濯してから部屋の中に干していてもすぐに乾くし、着心地も良いので頻繁に着ていると言ってもらったことがあります。グッズにプリントされているロゴは、私が大好きなデザイナーさんに依頼しました。やっぱり可愛いデザインでないと、みんな楽しく着られないと思ったので、そこにはこだわって作りました。
― 2022年に「オタ活でSDGs」が始まりましたが、この数年でSDGs自体の認知度も上がってきたように感じます。
NIKKI もうSDGsという言葉を知らない人はほとんどいないですよね。ファッション業界ではハイブランドも動き始めたし、身近な製品に「リサイクル」や「サステナブル」という文言を見かけることも増えてきました。エコバックやタンブラーを使う人も多くなり、誰でもサステナブルなことに取り組みやすい環境になってきたと感じています。
― Tシャツの後に、タンブラーや財布といったグッズを展開されていましたね。
NIKKI みんながよく使うものから、グッズを作っていこうと考えました。タンブラーは私も持ち歩きますし、お母さん世代だと水筒を持ち歩く方も多いので、生活に取り入れてもらいやすいのではと…。財布は、廃棄されるはずの牛革を再利用したアップサイクルウォレットです。バングラデシュの工場で作られているものなのですが、そういった背景を知ってもらうことが大切だと思い、発売の際にはウェブサイトに記事を上げて説明しました。
“サステナブルは楽しい”と、思ってもらえるような活動を。
― 活動を続けてきて、ファンの方々の反応が変わってきたと感じることはありますか。
NIKKI 何名かから、SDGs関連のボランティア団体に入ったとか、SDGsに取り組む企業に就職したと聞きました。学生さんからは、「授業で学んだSDGsと、自分の好きなことを繋げられるんだ」という反応をもらったこともあります。ライブ会場での衣類回収にも、みんな継続的に服を持ってきてくれていますね。
また、WHITE JAMの活動としては、昨年初めてプラスチック製のCDをやめて、紙製品のミュージックカードがジャケットの中に入っている仕様に変えました。カードに載っているQRコードを読み取って、サイトにアクセスすると、曲をパソコンやスマホにダウンロードできるというサービスがあるんですよ。ただ今年発売した全国流通盤では、そういった仕様にすることが難しく、通常のCDで販売するしかありませんでした。グッズやCDなど、物が大量に動くのがエンタメ業界なので、そこをサステナブルに変えられることができたら大きいのに、現状のシステムではなかなか変えられないというのがもどかしいところです。
WHITE JAM 10周年 Album "砂時計"には、紙製品のミュージックカードが中に入っている。
― 今後、さらに挑戦したいことなどはありますか。
NIKKI これまで衣類回収やタンブラーを使うことなどを提案してきましたが、それらをいかに自分の身近なことだと感じてもらえるか、このプロジェクト自体を“楽しい”と感じてもらえるか、ウェブサイトなどでの見せ方を変えていくことが今後の挑戦だと感じています。SDGsの活動を見聞きすることは増えたと思うけれど、実際にその一歩を踏み出すことは難しい…。手に取ってもらうために、みんなが「欲しい」「写真を撮って周りにシェアしたい」と思うような、お洒落で可愛いグッズをデザインすることはとても大事で、その延長線上に“サステナブル”があることを、しっかり伝えていけたらと思っています。エンタメ業界に身を置く私だからこそできる発信の仕方を、頑張って探していきたいですね。
昨今の推し活ブームもあり、「“推し”がいる!」という方はたくさんいらっしゃるのではないでしょうか。もし好きな人やものを応援することが、自然とSDGsに繋がれば、とても素敵で、嬉しいことですよね。
例えば、音楽アーティストのなかには、サステナブルや社会問題に対するアクションを起こしている方が多くいらっしゃいます。「自分の好きなアーティストはどうだろうか?」「この人はどうして、こういった活動をしているのだろうか?」と一度調べてみてはいかがでしょう。そのアーティストを応援することが、もっと誇りに思えるかもしれませんよ!
「オタ活でSDGs」ウェブサイト
NIKKI(ニッキ)
大阪生まれ。音楽グループ WHITE JAM の女性ボーカル。メンバーと共にマネージメント会社を設立し、アーティスト業と並行しながらマネージメントの運営を担う。特にファン=通称 JAMILY(ジャミリー)との関係を大切にしている。女性だからこそ分かる繊細な感情をよく理解しており、幅広い世代の女性から信頼を寄せられている。
コロナ禍を経て2022年より「オタ活でSDGsプロジェクト」を立ち上げ、エンターテイメント業界におけるサステナビリティを目指している。
取材・執筆:熊沢紗世
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