BRINGは、使用済み製品を回収・リサイクルする過程において、「どの製品が、どの原料や製品に生まれ変わったのか」を追跡できるB2B向けサービス「BRING Your Own」を展開しています。現在、この仕組みを活用し、2025年4月〜6月に高尾山にある直営店「BRING CIRCULAR TAKAO」などで回収した衣類の一部から、来年BRINGがオンラインストアや直営店で販売予定の服の原料を作り、実際にリサイクル工程をトレースする企画が進行中です。
【リサイクル工程のトレース 第2弾】BRING独自のケミカルリサイクル技術で、回収した衣類を分解・精製する。
2025.11.26
回収された衣類はまず分別拠点へ送られ、リユース・リサイクルに分けられました。この工程については、8月に公開した記事「【リサイクル工程のトレース 第1弾】お客様から回収した衣類の一部が、来年発売のアパレル製品に生まれ変わります!」をご覧ください。
ポリエステル繊維を分解し、染料や不純物を取り除く。
リサイクルへと分別された衣類のうち、ポリエステル100%の衣類は、BRING独自のケミカルリサイクル技術を用いて再生ポリエステル樹脂へと生まれ変わります。対象となる衣類の回収・分別が終わった後、7月中にBRINGの北九州響灘工場のラボで「解重合」が行われました。
リサイクル工程② 解重合
液体状のエチレングリコールの中で衣類を加熱し、ポリエステル繊維を分解します。
ポリエステル繊維には複数の種類がありますが、一般的な衣類に使われるもののほとんどがPET(ポリエチレンテレフタレート)です。PETは、「エチレングリコール」と「テレフタル酸」という2つの構造で成り立っています。解重合では、そこに新たなエチレングリコールと触媒(反応を促進する物質)を加えることで、PETをBHET(テレフタル酸ビス(2-ヒドロキシエチル))に分解します。
BRING独自のケミカルリサイクル技術で、BHETを精製する。
次の「薄膜蒸留」「分子蒸留」の工程は、9月~10月にかけて、JEPLAN本社ラボで行われました。
リサイクル工程③ 薄膜蒸留
精製工程の最初のプロセスです。「解重合」で過剰に添加されたエチレングリコールを取り除きます。解重合後のBHET溶液を装置の内壁に薄い膜のように広げ、それを熱することで溶液の中に混ざったエチレングリコールを蒸発させます。
衣類が溶け込んだBHET溶液を投入する。
BHET溶液を薄く引き伸ばす。
この装置では、BHET溶液を薄膜状に広げることで、迅速かつ均一な熱伝導を実現し、エチレングリコールをすばやく気化させることができるのです。エチレングリコール以外の粗BHET(BHET+この工程では取りのぞけない不純物)は、そのまま下に流れ落ちていきます。この薄膜蒸留で、エチレングリコールを取り除くことができます。
下に流れ落ちていく粗BHET。
リサイクル工程④ 分子蒸留
「薄膜蒸留」と同様に装置の内壁に薄い膜を作り、熱することで、次はBHETを蒸発させます。気体となったBHETをすぐ内側にある冷却器で冷やし、液体に戻して回収しています。
薄膜蒸留と仕組みは同じ。粗BHETを薄く引き伸ばし、蒸発させる。
螺旋状の冷却器で冷やされ、液体に戻ったBHETが螺旋を伝って下に落ちていく。
液体で回収された後、さらに冷えて固まったBHET。薄い紫色をしている。
今回のBHETは紫色が残っているのが特徴です。これまでのリサイクルでは黄味がかったBHETになることが多かったため、今回は異なる色味の再生ポリエステル樹脂ができるかもしれません。
限りなく不純物を取り除いた、BHETの結晶を析出する。
分子蒸留を終えたBHETは再び北九州響灘工場に戻り、最後の精製工程である「晶析」が行われました。
リサイクル工程⑤ 晶析
温水にBHETを一度全て溶かした後、徐々に温度を下げていきます。すると、あるポイントでBHETが水に溶けていられなくなり、BHETの結晶を析出することができます。この時不純物は水に残るのですが、急に冷やすと不純物を含んだまま結晶になってしまうため、ゆっくりと冷やし、より純度の高い結晶を析出します。
晶析に使用した装置。
BHETを装置に投入する。
お湯に溶かしたBHETを抜き出す。
徐々に温度を冷やすことで、純度の高いBHETの結晶を析出させる。
フィルターでろ過する。
ろ過後のBHETの結晶。
最後にフィルターでろ過し、BHETの結晶のみを回収します。ここまでの精製工程を経て、限りなく不純物を取り除いたBHETを精製することができます。
こうして、10月末には北九州響灘工場・JEPLAN本社ラボでの精製工程がすべて完了しました。これらの工程は通常、工場のプラント内で行われますが、今回はラボ(研究・実験室)で実施されました。一度に装置に入れられる量が限られているため、規模は小さくなりますが、中で起きている反応は変わりありません。ガラス管や透明な反応装置内で起こる反応を間近で観察できる、貴重な機会となりました。
完成したBHETの結晶は、この後「重合」と呼ばれる工程を経て再生ポリエステル樹脂へとリサイクルされます。重合の様子は、来年初頭に記事として公開予定です。ぜひ楽しみにお待ちください!
執筆:熊沢紗世
あわせて読みたい
いま話題の記事