対談する辻哲郎氏、佐々木信氏、中村崇之の3名

BRING TALK SESSION03 サーキュラーエコノミーとは?循環するビジネスで経済を回す。

2024.7.12

20243月、D&DEPARTMENT HOKKAIDO by 3KGにて、BRINGのポップアップショップとトークショーを開催しました。

D&DEPARTMENT HOKKAIDO by 3KGの外観

トークショーのテーマは「あらためましてサーキュラーエコノミー」。元ドローイングアンドマニュアルアートディレクター(現職 大手電機メーカーデザイナー)の辻哲郎様、3KGディレクター佐々木信様、そしてBRINGディレクターの中村崇之が登壇し、改めてサーキュラーエコノミーを見つめ直しました。

トークショーの模様はHIVEのポッドキャストで全編配信中です。今回はその中から一部を抜粋してご紹介します。


消費者と企業を巻き込む、BRINGのサーキュラーエコノミー。

エレン・マッカーサー財団によるバタフライダイアグラム

中村 これは、サーキュラーエコノミーの考え方を図にしたものです。この図を描いたエレン・マッカーサー財団は、サーキュラーエコノミーの話をすると必ず名前が挙がるイギリスの財団です。エレン・マッカーサーは元々セーリングの選手だったんですが、引退した後に財団を立ち上げました。この財団がコンセプトとしていたのがサーキュラーエコノミーです。この図は、「バタフライダイアグラム」と言われていますが、右と左に循環を表すような輪が広がっていますよね。左側は生物学的技術でのリサイクル、右側は科学的技術でのリサイクルを表しています。3R(リデュース・リユース・リサイクル)という言葉を聞いたことがあると思いますが、それも重要なコンセプトとして取り込まれています。

佐々木 いつ頃描かれた図なんですか?

中村 2000年の前半くらいです。この図のポイントは、ちゃんと経済合理性があるということだと考えています。例えば、「なぜ石油から作ったものは流通するのか」というと、付加価値を加えることができるから。「なぜリサイクルが難しいのか」というと、基本的にものは劣化するからだと言えます。でももし、ゴミが原料として仕入れられて、加工されて、付加価値のある最終製品になるのであれば、私たちはゴミを(より付加価値の高い物に再生して)売ることができるようになります。

対談する辻哲郎氏、佐々木信氏、中村崇之の3名

佐々木 今は、そうなっていない。

中村 そうなることが必要だと思っています。この循環の輪が実現するには、付加価値を高めていくしかない。

佐々木 根性で循環させようということではないということですね。

 経済合理性を高めるために、BRINGはどんなアクションを起こしていますか。

中村 BRINGがやっていることは大きく2つ。服の回収と、製品の販売をビジネスとして行っています。服の回収では、回収を行っている企業からお金をもらっています。あれ?さっきの話と違うじゃないかと思いますよね。

 思いました(笑)。

中村 そう思うでしょう。けれども、お店に回収箱を置けば、来店者数を上げることができます。その上で、服を持ってきてくださった方には、お得に買い物ができるクーポンを配布しています。そうすればお買い物をしてくださる方も増えますよね。つまり、私たちはお店の売上に貢献し、その対価をいただいているとも言えるのです。

 企業からBRINGに払っているのは、マーケティングやセールスプロモーションの費用でもあるということですね。

中村 経済合理性に対するもう一つのアクションは、最終製品の販売です。石油と同等の品質の再生樹脂を使って、素敵で長持ちする製品を作れば、より多くの方にご購入いただけると思っています。

BRINGディレクターがBRINGのアイテムを紹介する

 リサイクルしたものを使っているからといって、品質が悪いわけではないし、企業側としては、サステナブルな製品作りをしているという印がもらえるということですね。

リサイクル事業における、トレーサビリティの重要性。

中村 リサイクルが(受け入れられる量は)無限だと思っている方が多いと思いますが、実はリサイクルは有限なのです。受け入れられるキャパシティがあります。例えば、繊維のリサイクルで自動車内装材を作ることができますが、それは自動車の生産量に依存します。また需要が多いからと言って、急に工場を大きくすることはできません。需要と供給のバランスをコントロールするのが難しいのです。BRINGは服の回収量を可視化することで、再生樹脂の生産計画を立て、それに合わせて流通・販売のサプライチェーンを組むことを可能にしました。

BRING回収で集まった衣類の分別先

BRING回収で集まった衣類の分別先

 回収企業から毎月どれくらいの服が送られてくるか、データ化されているということでしょうか。

中村 そういうことです。それでも完璧にコントロールすることはできないので、多く届きすぎた分はストックしています。

 つまり、原料を買う人にとっては、いきなり「来月分ありません」ということがないから、信頼できるパートナーとして商売をすることができるということですね。

対談する辻哲郎氏、佐々木信氏、中村崇之の3名

中村 サプライチェーンマネジメントを行うことで、私たちはリユース、リサイクルされた服のトレーサビリティを確立することができます。役目を終えた服のトレーサビリティが、今、社会から求められていることだと感じています。


トークショーの続きは、是非HIVEのポッドキャストでお聴きください!BRINGのウェブサイトからお聴きいただけるほか、各種ストリーミングサイト(SpotifyApple PodcastsGoogle Podcasts)でも配信中です。

辻哲郎

1980年生まれ。映像演出とデザインをベースにキャリアを重ねる、ブランドの「これまで」や「これから」をストーリー化し、可視化する、タイムラインの見えるブランドデザイナー。

佐々木信

1974年北海道生まれ。札幌を拠点に活動し20013KGを設立。グラフィックデザインを中心に、ウェブ、映像制作など活動は多岐に渡り、2007年には札幌にD&DEPARTMENTの最初のフランチャイズ店舗となる北海道店をオープンした。札幌市のシティプロモーション「SAPP‿RO」のブランディングや、札幌市交通局のICカード「SAPICA」のデザインを手がけた他、北海道に拠点を置く航空会社AIR DOのマスコットを描いた。2007年、シブヤ大学の姉妹校である札幌オオドオリ大学の立ち上げに参加し、理事を務める。

中村崇之

1982年生まれ。2006年、東京造形大学メディア芸術専攻卒業。2008年、早稲田大学大学院国際情報通信研究科修士課程修了。2010年、株式会社JEPLAN入社(当時 日本環境設計株式会社)。入社時よりBRING(旧FUKU-FUKU)ブランドマネージャーを担当。現在はBRING Businessのディレクターとして、事業開発、ブランディング、ディレクション、企画、MDD2Cを担当。

執筆:熊沢紗世

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