東京の地下を走る東京メトロ。
都市のインフラとして日々多くの人を運ぶ一方、その裏側では長期にわたり資源循環の取り組みが続けられてきました。
昨年からは「BRING UNIFORM」とともに、駅係員・運転士・車掌の制服や技術部門の作業着の回収と再資源化にも取り組んでいます。ポリエステル糸へと生まれ変わった素材から、2種類のコラボレーションハンカチが誕生しました。
東京の地下を走る東京メトロ。
都市のインフラとして日々多くの人を運ぶ一方、その裏側では長期にわたり資源循環の取り組みが続けられてきました。
昨年からは「BRING UNIFORM」とともに、駅係員・運転士・車掌の制服や技術部門の作業着の回収と再資源化にも取り組んでいます。ポリエステル糸へと生まれ変わった素材から、2種類のコラボレーションハンカチが誕生しました。
モチーフになったのは、銀座の街並みと神谷町の夜景。
「東京の景色を持ち歩く」というキャッチコピーのとおり、色鮮やかに描かれたイラストは、まるで東京の風景を手の中に収めたかのようです。
東京メトロとして初めて取り組んだ、ケミカルリサイクル由来の素材を活用した商品開発。コンセプト立案からデザイン設計、販売に至るまで、さまざまな試行錯誤が重ねられてきました。
その道のりについて、サステナビリティ推進部の三上さん、山口さんにお話を伺いました。
東京地下鉄株式会社 経営企画本部 サステナビリティ推進部/三上 孝英さん(左)と山口 諒子さん(右)
東京メトロのサステナブルな商品開発
——今回のコラボレーションハンカチは、どのようなところから始まったのでしょうか。
三上 これまで私たちは、アルミ車両のリサイクルなど、事業の中で資源循環に取り組んできました。そうした取り組みを、より多くの方に知っていただくために、一つの商品として届けられないかと考え、今回サステナブルな商品開発に挑戦しました。
ハンカチに収める画角は、地図情報を参照しながら何度も微調整しました。東京メトロの駅マークが端に少し映り込んでいるのも、細かなこだわりのひとつです。和光の時計台という銀座の象徴だけでなく、人や車の往来を描くことで、銀座の街のにぎわい全体を表現することを意識しました。
一方で神谷町のデザインは夜景にすることで、東京タワーがより際立ち、男性でも持ちやすいシックな色調に仕上げています。このネイビーは何パターンも検討し、夜景が最も美しく見えるトーンを探しました。
銀座はにぎわいと明るさ、神谷町は落ち着きを意識した対照的な仕上がりとしています。対極的な表現とすることで、それぞれのグラフィックの美しさを引き立てるとともに、2枚セットで揃えたくなるデザインを目指しました。
高品質プリントを採用しているため、額装して飾ることもできる。
山口 裏面の路線図についても、デザイン性を高めることで、東京メトロファンの方々からも好評をいただいています。東京マラソンでは海外からの参加者も多いため、さりげなく和柄を取り入れています。お土産やギフトとしても選んでいただけるようなデザインを目指すとともに、路線図と和柄を組み合わせた、これまでにない表現にも挑戦しています。
サステナブルな機能性ハンカチ 東京マラソンでお披露目
——マラソン会場での反応はいかがでしたか。
三上 会場では、吸水性や冷感性などの機能を体感できる展示を行いました。スポイトで水を垂らし、素早く吸水する様子や今までにない冷感性を実際に体験していただいた結果、「いい商品だね」と感じて購入していただくことが多かったです。
山口 商品とあわせて、ユニフォームの回収からポリエステル糸へのリサイクル、ハンカチとして生まれ変わるまでの工程をパネルで展示しました。
パネルを見て、「駅員の制服が全く違う製品に生まれ変わるんだ」と驚かれる方が多かったです。単なる機能性ハンカチとしてだけでなく、その背景にあるストーリーにも興味・関心を持っていただけた印象があります。
また、衣類がリサイクルによって新たな製品に生まれ変わることを初めて知ったという声も多く聞かれました。もともとはストーリーを知っていただくことを目的としていましたが、結果としてメトロの取組みそのものへの関心の高まりにもつながったと感じています。
——商品をつくる過程で、苦労されたことはありますか。
山口 サステナビリティ推進部として初めての商品開発ということもあり、社内の理解を得るプロセスが非常に重要でした。
これまで東京メトロの商品といえば電車のデザインをモチーフとしたものがメインだったため、電車以外をモチーフにしたアイテムに難色を示す社員もいました。しかし、完成したグラフィックの仕上がりを見た社員からは、「思った以上にきれいだ」「東京メトロらしい商品になった」といった反応も多く、想像以上に好評でした。
また、資源循環にはどうしてもコスト増のイメージがつきまといます。廃棄物を循環させて商品化し、それを収益につなげる。そうした流れを実現し、「事業として回していく」ことを示すことが、今回の大きなポイントだったと思います。
東京メトロが取り組む 制服回収とユニフォームリサイクル
——今回、BRING UNIFORMに参加された経緯を教えてください。
三上 これまでも制服のリサイクルには取り組んできましたが、JEPLAN様とのご縁をきっかけに衣類のケミカルリサイクルという新たな手法を知りました。今回のコラボレーションハンカチの販売に先立ち、BRING UNIFORMに初めて参加しました。
東京メトロの制服は、不正利用などのリスクを避けるためICタグで管理されており、枚数や所在も厳密に把握されています。こうした厳格な管理のもとで運用されているため、回収の仕組みを整えるには慎重な調整が必要です。
BRING UNIFORMで回収した制服・作業着。
取り扱いには細心の注意が必要ですが、回収からリサイクル、再製品化までを一貫して行うBRING UNIFORMの取り組みには、強く賛同しており、今後もこうした取組みの広がりに貢献していきたいと考えています。
——今回の取り組みのほかに、どのような資源循環に取り組まれているのでしょうか。
三上 例えば、使用済みの切符をトイレットペーパーにリサイクルする取り組みや、再生水を利用した車両の洗浄、車両のリサイクルなどがあります。
また、2024年度から進めている「アルミニウム車体の水平リサイクルに関する共同研究」では、2025年度には廃車となった半蔵門線8000系車両の車体のアルミを品質を落とすことなく水平リサイクルし、半蔵門線18000系車両の車両内装部品へ循環利用することに成功しました。これにより、国内の地下鉄車両として初めて、アルミニウムの水平リサイクルを実現しています。
山口 こうした取り組みは長年続けてきたものの、社内では当たり前になっている部分も多く、あまり外に発信されてこなかった側面もあります。
そういった意味でも、今回のように商品として届けることで、資源循環の取り組みそのものを知っていただくきっかけになったのではないかと思います。
地下を走る鉄道のように、資源の循環もまた、普段は意識されることが多くありません。
けれども確かに、私たちの生活を支えています。
駅で働く人の制服が、別の製品へと生まれ変わる。
普段は目にすることのない資源循環の流れを、ハンカチを通して感じられる取り組みでした。
東京の景色を持ち歩きながら、その背景にある循環にも、少しだけ目を向けてみたくなります。
【NEXT ACTION】
毎日使っている駅や街の中にも、実はさまざまな資源循環の取り組みがあります。
ポスターや回収ボックスを見かけたとき、「これは何につながっているんだろう?」と少し気にしてみる。
そんな小さな視点の変化が、循環を身近に感じるきっかけになるかもしれません。
東京メトロ街並みアートクロス【神谷町】
https://www.metocan.com/product/385
東京メトロ街並みアートクロス【銀座】
https://www.metocan.com/product/386
BRING UNIFORMウェブサイト
取材・執筆:熊沢紗世
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