BRINGを運営する株式会社JEPLANのグループ会社、ペットリファインテクノロジー(以下、PRT)では、「HELIX™️」と呼ばれる再生PET樹脂の製造を行なっています。
ペットボトルの製造工程を解説!プラスチック製品の企画から小ロット生産まで、一貫して行う龍江精工株式会社の工場を取材しました。
2025.10.22
HELIX™️は、使用済みペットボトルをケミカルリサイクルして作られています。PRTのリサイクルフローでは、ペットボトルを分子にまで分解して、異物や色を取り除くため、何度でも再生PET樹脂として循環し続けることができるのが特徴です。HELIX™️は現在、ペットボトル飲料や化粧品等の容器の原料として使用されています。
そもそも、「ペットボトルって何を原料に、どうやって作られているの?」と疑問に感じる方も多いのではないでしょうか。今回は、一般的にPET樹脂がペットボトルになるまでの工程をご紹介します。
取材にご協力いただいたのは、プラスチック成形用金型設計製造業として50年以上の歴史を持つ龍江精工株式会社さんです。埼玉県蕨市にある工場の見学もさせていただきました。
龍江精工株式会社 代表取締役社長 田中直樹さん。
龍江精工株式会社 生産技術部 部長 加賀谷学さん。
ペットボトルを作るためのプリフォーム成形&ブロー成形とは?
ペットボトルの製造では、まず第1段階として「プリフォーム」と呼ばれる製品の原型となる材料を成形します。龍江精工では、「インジェクション(射出)成形法」を用いてプリフォームを成形しています。
<プリフォームの成形(ペットボトルの場合)>
①PET樹脂を約290℃にまで加熱し、溶融させる。
②あらかじめ閉じられた金型に、高温・高圧で注入する。
③金型の周りにある隙間に10〜15℃の水を流すことで、急冷(40℃以下まで)する。
④樹脂が固化し、透明になる。
⑤金型を開き、試験管のような形をしたプリフォームを取り出す。
なお、③の金型を冷やす工程で徐冷(170℃程度まで)を行うと、PET樹脂が白く結晶化し、ストレッチしない耐熱性の部品が製造できます。これはペットボトルの口の部分などに使用されています。
第2段階では、成形したプリフォームを再度加熱し、高圧を吹き込んで加熱することで、金型の形状に成形します。この過程を「ブロー成形」と呼びます。
<ブロー成形(ペットボトルの場合)>
①プリフォームをヒーターで100〜105℃に加熱する。
②プリフォームを、ペットボトル状の金型に挿入する。
③プリフォームの中に「延伸ロット」を挿入する。
④約4MPaの高圧で、プリフォームを金型に沿って膨らませる。この時、延伸ロッドで垂直方向に、空気によって水平方向に伸びて膨らむため、この方法は「二軸延伸ブロー」と呼ばれています。
⑤金型を冷やした後、金型からペットボトルを取り出す。
PET樹脂の特性により、伸ばすほど分子の繋がりが強くなります。二軸延伸ブローでは、垂直方向と水平方向に伸ばしながら膨らませるため、簡単には割れない、飲料向きのペットボトルを作ることができるということです。
さらに、ペットボトルのブロー成形には、「ホットパリソン法」と「コールドパリソン法」があり、上記はコールドパリソン法の過程です。
ホットパリソン法は、プリフォームの射出成形とペットボトルのブロー成形が一体となったような機械を使います。そうすることで、プリフォームの成形を行った余熱でブロー成形を行うことができ、再加熱の必要がありません。
しかし、一般的にペットボトルの成形には、コールドパリソン法が採用されることがほとんどです。なぜかというと、射出成形機は10秒間に144個(1分間に864個)プリフォームを成形できる一方、ブロー成形は1分間に700個と限りがあり、それぞれ別に運用した方が効率的といえるためです。また、プリフォーム成形とブロー成形を分業で行うことでコストが抑制でき、大量生産に向いているというメリットもあります。
機械の正確さと熟練の技術で実現する、高性能の金型作り。
龍江精工は、プラスチック容器の製造に関わるさまざまな事業を行っており、企画制作段階の提案から、試作品の製作、金型の設計・製造、量産品の成形、その後の加飾や組み立てまで、一貫して対応することができます。また小ロットでの生産も可能なため、まだ世に出ていない実験的な製品の試作が行われることも多いそうです。
プラスチック容器の製造は、金型作りが肝となります。龍江精工では、高精度加工機と熟練の技術により、高性能・高耐久性の金型作りを実現しているとのことでした。さらには、納入後の金型のメンテナンスにも対応しており、成形中についた傷や歪みなどを手作業で修繕されていました。
トライセンターでは、製作した金型の評価を行います。電動射出成形機を使用して、一般的な量産機と同じ設定で射出を試すことができ、厳しい検査をクリアしたものがお客様に納入されていきます。量産機と同じ設定で試作を行なっているため、納入された金型はそのまま量産工場へ持っていき、成形作業に使用することができるということです。
プラスチック容器製造における、サステナブルな取り組み。
龍江精工では、サステナブルな商品として「ECO in PACK(エコインパック)」を生産しています。これは環境に配慮された詰め替え容器を、消費者にとってさらに使いやすくできるよう開発された商品です。注ぎ入れ不要で、パウチに容器をそのまま被せるだけで詰め替えが完了する構造になっています。手を汚さないで済むほか、パウチ内が真空状態になっていくことで中身が外気に触れず、内容物の衛生を保つことができます。
内容物を使用する際は、ポンプを押すことで、吸い上げ口に向かってパウチが収縮していきます。こうすることで高粘度の内容物でも簡単に押し出すことができ、徐々に収縮していった結果、内容物を最後の最後まで、余すことなく使い切ることができます。
このほかにも、コーヒーや茶葉のかすを使ったプラスチックカップ作りや、不良品の容器のふたをリサイクルした製品作りを行ったことがあるそうです。再生原料を用いたサステナブルな製品作りが注目を集めていますが、コストの高さや衛生面での課題があるのも事実。龍江精工のトライセンターで試作を行うことが、新素材を用いた製品を開発する足がかりになっているのです。
現在BRINGでは、再生PET樹脂 HELIX™️を用いたペットボトルビールの開発に取り組んでいます。先日北海道札幌市で開催された「EZO 2025」では、ペットボトルビールの数量限定販売を行い、ご来場の皆様にご好評いただきました。
ビール等の炭酸飲料を入れるペットボトルは、炭酸ガスの圧力に耐えられることが求められるため、それに適した形状となっています。例えば容器を丸い筒状にして圧力を均等に受けるようにし、さらに一定の厚みを持たせています。またペットボトルの底は5つの突起があり、花びらのようになっています。これは「ペタロイド(花弁)」とも呼ばれ、ガス圧に耐え、容器を安定させるための工夫の一つです。
さらに口の部分の溝にスリットを入れることで、ふたを開ける際に徐々に空気が抜けるようにし、ガス圧で「ポンッ!」とふたが飛んでしまうことを防いでいます。
BRINGのペットボトルビールも、このような構造で試行錯誤を繰り返し、皆さまに手にとってもらえるよう量産できる仕組みを模索中です。今後の情報に是非、ご期待いただければと思います!
龍江精工株式会社
HELIX™オフィシャルサイト
取材・執筆:熊沢紗世
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