Beverages displayed on a table with a smiling person in the background.

なぜキリンは再生PETを選んだのか?
『キリン ホームタップ』にHELIX™が採用されるまで

2026.10.7

月2回、工場つくりたてのビールをご自宅に定期配送し、専用のビールサーバーで注ぎたての生ビールを楽しめる会員制サービス「キリン ホームタップ」。定番ビールの『一番搾りプレミアム』や『スプリングバレー』に加え、多彩なクラフトビールをきめ細かくクリーミーな泡で味わうことができ、多くの人々の「家飲み時間」を豊かにしています。

 

専用サーバーにセットして使う1LのPETボトルには、JEPLANグループ独自のケミカルリサイクルによって生まれたPET樹脂「HELIX™」が採用されました。ビールをPETボトルで提供するという技術的ハードルをどのように乗り越えたのでしょうか。そして、資源循環を一時的な取り組みで終わらせず、事業として続けていこうとするキリンの「CSV(Creating Shared Value=共通価値の創造)経営」とはどのような考え方なのでしょうか。

 

キリンホールディングス株式会社 本社を訪れ、CSV戦略部の足海洋史さんにお話を伺いました。

Building with a large banner, trees, and construction in the foreground.

キリンホールディングス株式会社の本社は東京都中野区にある。中野は ”サブカルの聖地” とも言われている。

A man standing in front of a Kirin sign and decorative wall.

キリンホールディングス株式会社 CSV戦略部の足海洋史さん。


ビールをPETボトルに。
ケミカルリサイクルが支えた高い品質

—— 今回、「キリン ホームタップ」の1Lボトルに、JEPLANグループのHELIX™(ケミカルリサイクルによって生まれたPET樹脂)が採用されました。この背景について教えてください。

 

足海 キリングループでは「環境ビジョン2050」を策定し、2050年までに「容器包装を持続可能に循環している社会」を目指しています。その目標として、「2027年までに日本国内のPET樹脂使用量の50%をリサイクル樹脂にする」ことを掲げ、リサイクル樹脂の採用を進めています。

その一環として、今回のHELIX™採用させていただきました。

A white beverage dispenser next to a bottle labeled

キリン ホームタップのビールサーバー(右)と、HELIX™を使った1Lボトル(左)。

ケミカルリサイクルとメカニカルリサイクル。
PETの資源循環の最大化へ

—— ホームタップのボトルは、丸みを帯びた可愛らしい形をしていますね。

 

足海 ホームタップは、ご自宅に置くビールサーバーの形にもこだわり、スタイリッシュなデザインに仕上げています。そのサーバーの形に合わせて、ボトルの形状もデザインされました。さまざまな形に成形しやすいPET樹脂は、デザイン性を高めるうえでも適していました。お酒の容器にPETを使うこと自体があまりないため、社内外からもお問い合わせをいただきました。

A man in a suit sitting on a couch, smiling.

—— 資源循環の取り組みを、今後どのように広げていきたいとお考えですか。

 

足海 私たちが目指しているのは、2050年に容器包装が持続可能になっていること、つまり、PET樹脂を用いた容器をリサイクルし、循環し続けている状態です。その中で、ケミカルリサイクルは、有効な選択肢の一つだと考えています。※1 ケミカルリサイクルとメカニカルリサイクル※2 と適切に組み合わせながら、資源循環の最大化を目指しています。

 

※1 キリンは、ペットボトル以外のPET製品の資源化にも取り組んでいます。2025年4月には、業界を超えた9社が連携し、化粧品ボトルや工業用フィルムといった「非食品用途のPET」をケミカルリサイクルによって「飲料用PETボトル」に再生する国内初の取り組みを開始しました。
(
出典:キリンホールディングス プレスリリース
https://www.kirinholdings.com/jp/newsroom/release/2025/0421_02.html)

 

※2 メカニカルリサイクルとは、ペットボトルを破砕・洗浄・溶融し、新しいペットボトルの原料をつくるリサイクル方法です。なお、本文中の環境目標は「キリングループ環境ビジョン2050」に基づいています。
(
出典:キリンホールディングス ウェブサイト
https://www.kirinholdings.com/jp/sustainability/materiality/env/mission/) 

CSRからCSVへ。
社会的価値と経済的価値を両立するキリンの考え方

—— キリングループでは経営の根幹に「世界のCSV先進企業になる」というビジョンを掲げ、環境や健康、コミュニティなど多岐にわたる社会課題に取り組んでいます。「CSR」という言葉もよく耳にしますが、キリンが推進する「CSV」とはどのような違いがあるのでしょうか。

 

足海 私たちがCSVを推進するようになった大きなきっかけの一つは、東日本大震災での経験でした。当時、弊社の工場も被害を受けた中で、復興に向けて寄付を行うなど、CSR(企業の社会的責任)としての支援活動に取り組みました。CSRは企業が果たすべき重要な責任であり、当社も引き続き大切にしています。その一方で、事業と切り離した活動だけでは、社会課題の解決を長く支え続けることが難しい場面もあると感じました。

 

社会を良くし続けるためには、企業側も成長し続けなければならない。だからこそ、社会的価値の創出と企業の経済的成長を両立させ、サステナブル(持続可能)な形にすることが不可欠です。事業活動そのものが社会を良くしていく。これが、私たちがCSVを経営のコンセプトに据えている基本的な考え方です。

自然との共存。
キリンのCSVとサステナビリティ 

—— 容器の資源循環以外にも、キリングループが注力しているサステナビリティの取り組みを教えてください。

 

足海 例えば、水資源を守るため、工場周辺で森林整備を行う「水源の森活動」や、『午後の紅茶』などの原料となるスリランカの紅茶農園への支援も行っています。紅茶農園では、環境に配慮した農法への転換や、「レインフォレスト・アライアンス認証」など、信頼性の高い認証の取得を現地で支援しています。

 

これも先ほどのCSVの話につながるのですが、森林や農地が失われたり、環境負荷によって劣化したりすれば、原料の安定調達は難しくなります。自然資本に支えられた事業だからこそ、その保全は重要だと考えています。

 

いかに長期にわたって、安定して継続できるかが重要です。「今だけ良ければいい」ではなく、ずっと続いていく仕組みを作ることが、サステナビリティにおいて最も大事な観点だと思っています。 

Modern retail display with screens and product showcases.
Display of various beverages and products at a retail counter.

キリングループが目指す「CSV経営」は、「自然を守りながら、美味しい飲料をこれからも飲み続けたい」という思いでした。「キリン ホームタップ」のボトルにHELIX™が採用された背景にも、その理念が息づいています。見えないところで資源の循環や豊かな森、そして持続可能な未来へとつながっているのです。

 

【NEXT ACTION —— 私たちにできること】

この記事を読んだ私たちが、今日からできるアクションはなんだろう。

 

企業の「想い」を知って選ぶ

毎日何気なく買っている飲み物や日用品。その企業がどんな社会課題に向き合い、どんな目標(ビジョン)を掲げているのかを、少しだけ調べてみましょう。「共感できる企業の商品を選ぶ(=応援する)」ことは、私たちができる最も身近なサステナビリティへの参加です。 

取材・執筆:熊沢紗世

あわせて読みたい

いま話題の記事

BOTTLE