日本各地で開催されるようになったマラソン大会。ランニング文化が盛んになる一方、ランナーが走り去った後には使い捨ての給水カップや防寒着が散乱し、大きな問題となっていることをご存知でしょうか。
INTERVIEW05 ランニングを通じて文化を伝え、世界と日本を繋ぐ架け橋に | 福内櫻子
2024.1.15
参加ランナー数3万人を超える「横浜マラソン」は、そうしたゴミ問題のほか、SDGs達成に向けて数々の取り組みにチャレンジし、サステナブルな大会づくりを目指しています。BRINGは昨年に引き続き、会場での衣類回収を行い、参加賞TシャツにはBRING Material™(再生ポリエステル樹脂)が一部使用されました。
また今回ランニングアドバイザーとしても活躍する福内櫻子さんの発案により、スタート地点での防寒着回収が実現しました。櫻子さんとBRING スタッフがハチマークの回収ボックスを背負い、待機列をまわって不要になった防寒着を回収。集まった衣類は、BRING のリサイクルプロセスによって素材に応じたリユース・リサイクルが行われます。
櫻子さんは、ドイツのベルリンマラソンで行われていた防寒着回収のアイディアに感銘を受け、日本でもこの取り組みを広めたいと感じたそうです。横浜マラソン参加後にニューヨークに留学し、グローバルに活躍するランナーを目指す櫻子さんにインタビューを行いました。
福内櫻子 | Sakurako Fukuuchi
大学時代は様々な実績を持ち、現在はランニングイベントでのcoaching、スポーツ関連の広告モデルとして活躍中。また、ランニングコミュニティやイベントを企画し、ランニングの基礎から、継続の方法、ランニングがもたらす体と心への良い影響などを伝え、ランニングカルチャーを盛り上げる活動を積極的に行っている。
― 環境問題を意識し始めたのは、いつ頃のことだったのでしょうか。
櫻子 私が生まれ育った福岡県北九州市は、八幡製鉄所をはじめとする工場地帯があるからか、学校での地球温暖化について習う時間が多かったです。ゴミの分別には厳しかったですし、「冷蔵庫はすぐ閉めなきゃ」とか、「車のアイドリングはやめて」とか小さいながらに家族に言っていました。最近では3 年前にオールバーズのアンバサダーを始めたこともあり、勉強会に通うなど、より積極的に学んでいます。ただ最初は「プラスチックを使うのをやめて、全部木に変えないと」というようにストイックに考えてしまっていたので、どこかやらされている感があって 。それよりも、コーヒーを買う時にマイボトルに入れてもらうと、なんだかいつもより美味しく感じたり、野菜もオーガニックのほうが美味しいと気づいたり、自分にとっても嬉しくて、環境にも良いことは今でも続けています。
― BRINGも、まずは製品として便利であることや、機能性が高く、お客様に「欲しい」と思っていただけることが大事だと考えています。
櫻子 リサイクルを意識しなくても、自然と環境に良いことに繋がっているのが良いですよね。今回の防寒着回収も、サステナブルな取り組みというだけでは目に留まらなかったかもしれませんが、スタート直前までちゃんと暖かい防寒着を着ることができて、不要になれば回収してもらえるという点がランナーにとって 1 番のメリットだったのではと思います。そして集まった服が着心地の良いT シャツなどに生まれ変わり、またランニングウェアとして着ることができるのも嬉しいです。
― 近年、多くのサステナブルブランドがランナー向けの製品を展開していますが、どういった印象をお持ちでしょうか。
櫻子 正直に言うと、パフォーマンス面においてはまだ、歴史のあるスポーツブランドには追いついていないと思います。長距離を走るランナーにとって、シューズや下着が合わないと擦れてストレスになったり、タイムに関わってきたりするため、とてもシビアな問題なんです。これは、10 年、20 年かけて追いついてくるものなのかもしれないですね。そのため大会等で使うのは難しいですが、カジュアルなランニングの場では、マイボトルを持ち、環境に配慮したウェアを選ぶようにしています。
― 今回、横浜マラソンでの防寒着回収をご提案いただき、ご自身も回収に参加された背景には、どのような思いがあったのでしょうか。
櫻子 日本でこんなにランニングが盛んなのは、道路や空気が綺麗だからだと思うんですよね。それが、ランナーが増えたり、マラソン大会が開かれたりしたことで汚れてしまうのは残念です。以前、道路脇の花壇の中に補給用のゼリーのゴミが落ちていたのを見つけたことがあり、とてもショックを受けました。普段ポイ捨てする人はほとんどいないと思うのですが、「ランニングしているときは良いだろう」という気持ちになってしまうのかもしれません。だから、横浜マラソンが掲げているように、街を綺麗にしながら、走るのも楽しむということができたら良いなと思っています。
― 防寒着回収のアイディアを得たというベルリンマラソンは、どんな大会だったのでしょうか。
櫻子 防寒着は、コース上に落とされていたものを車で回収したり、沿道にいくつか設置された回収ボックスにランナーたちが自分で入れたりしていました。防寒着回収だけではなく、給水用のコップも全て再生プラスチックで作られていて、使用後も回収されているようでした。ヨーロッパは元々、古着を再利用する文化があるみたいですね。
― 日本では、まだまだこういった取り組みを行っている大会は少ないですね。
櫻子 今後、広がっていくと思います。今日も回収ボックスを持ってランナーの皆さんに声を掛けると、「いいね~!」と反応してくださった方が多かったので。事前にインスタライブを見て、服を持ってきてくださった方もいました。
― 今後、挑戦してみたいことはありますか。
櫻子 海外のマラソン大会に参加して、いろいろな国のランニングカルチャーに触れたいです。ランニングは、言葉が通じなくても共通の趣味として楽しむことができるので、世界と日本を繋ぐ架け橋になるのではないでしょうか。今回、ベルリンマラソンの取り組みを知って、日本で広げていこうと思ったように、世界には素晴らしい取り組みが他にもあって、日本にもランニングを通じて伝えられるものがたくさんあるので、ランニングコミュニティを通じてそれらを伝え合うことができたら良いなと思っています。
2023年2月、BRINGは「せとだレモンマラソン」でも防寒着回収を行いました。