BRING TALK SESSION01 ハチマークの生みの親 | 新村則人 -後編-

2022.12.23

BRINGディレクターの中村が、多彩なゲストとともに、BRINGにまつわるアレコレを語る対談企画。今回は、資生堂、良品計画等、数々の広告デザインを担当し、BRINGハチマークの生みの親でもあるグラフィックデザイナー 新村則人さんをお迎えし、ハチマーク誕生秘話やエコロジーなデザインに多く携わる理由を伺いました。


新村則人 | Norito Shinmura

1960年山口県生まれ。松永真デザイン事務所、I&SBBDOを経て、新村デザイン事務所(現garden)設立。主な仕事に資生堂、無印良品、サッポロビールなど。JAGDA新人賞、ニューヨークADC銀賞、ブルノ国際デザインビエンナーレ金賞、東京ADC賞など受賞。

中村崇之 | Takayuki Nakamura

株式会社JEPLAN 営業業務部 プロダクトマーケティング課 課長  1982年生まれ。2006年、東京造形大学メディア芸術専攻卒業。2008年、早稲田大学大学院国際情報通信研究科修士課程修了。2010年、日本環境設計株式会社入社。入社時よりBRING™FUKU-FUKU)ブランドマネージャーを担当。現在、プロダクトマーケティング課課長。マネージャー、事業開発、ブランディング、ディレクション、企画、MD、D2Cを担当。

島育ちをアイデンティティに、自然を愛するデザイナー

 

中村 新村先生は、無印良品キャンプ場ポスターや、山口県漁連の環境広告など、自然をテーマにしたデザインをされることが多いですよね。そのきっかけは何だったのでしょうか。

 

新村 僕は山口県の小さな島の出身で、ド田舎育ち。小学4年生の時に赴任してきた先生が美術科の先生で、美術の時間は特に熱心に教えてくださったんです。その一つに、ポスター作りがありました。初めての経験だったけど、僕はすぐに夢中になりました。アイディアを考えるのが好きだったんです。

 

中村 元々、絵を描くことは好きだったんですか。

 

新村 オリジナルの漫画は描いていました。小さい頃に好きだったのは、マジンガーZ、ウルトラマン、仮面ライダー。先生の影響でポスターデザインの面白さを知り、小学5、6年生の時にはデザイナーの仕事を目指し始めました。

 

中村 新村先生のお仕事を拝見していると、やはり「ポスターの人」だなぁと感じますね。見た人の印象に残るような、デザインの強さがあります。

 

新村 単調にならないようにディティールには凝りながら、極力余計なものは入れないで、シンプルでシンボリックなデザインを心がけているので、そこで「強さ」を感じてもらえているんだと思います。

中村 かつてのポスターデザインには、一瞬で人を引き付けるような力がありましたよね。今のデザインはスマホなどの光るディスプレイ上で完結することが多いから、色の使い方や見せ方が変わってきているように思います。

 

新村 僕らの世代が影響を受けたのは、田中一光さんや松永真さん。高校卒業後、大阪の専門学校への進学を機に島を出て、その後、憧れだった松永真さんの事務所に採用していただいたんです。それで東京に来ました。一番の下っ端だった僕は主に雑誌のエディトリアルの仕事をしながら、ポスターやロゴのデザインをする先輩を横目で見て学んでいました。「デザインしないことがデザインだ」と、よく松永さんが話していたのを覚えています。真っ黄色で何も描いていないポスターでも、デザインになりうるのだと。ごちゃごちゃ入れなくても、メッセージが伝わればポスターになるんです。それが今でも、僕のデザインに対する考え方の基本になっています。

 

中村 その時の経験が今でも生きているんですね。

 

新村 松永さんが先輩に話しているのを、横から聞いていただけなんですけどね。松永さんの事務所で数年働いた後、もっと広告の仕事がやりたくなって、30歳で広告代理店に転職しました。そして、35歳の時に自分の事務所を作って独立したんです。

 

中村 かなりスピーディな動き方ですね。新村先生が作られる広告は「自然」をテーマにしたものが多いように感じるのですが、それはいつ頃からなのでしょうか。

 

新村 独立して、色々なコンペに応募していた時期があったんです。その一つが、自分の好きな会社をテーマにしたレターヘッドのコンテストでした。僕は実家の家業である「新村水産」を選んで、島の地図とその周りの魚の分布図を描いたデザインを作りました。自分の好きなものを詰め込んだ作品です。そうしたら、審査員の糸井重里さんに「海が好きなことが伝わってくる作品だ」と評価していただいて、それがターニングポイントになりました。

「無印良品 キャンプ場」ポスター

中村 都会に憧れた島出身の青年が、時代の先端を行く仕事をするようになったけれど、自分のルーツである自然を振り返って、そこに回帰していく…。まるで映画のようなストーリーですね。

 

新村 30歳までは、そんなこと考えてもいませんでした。都会のお洒落なファッションや自動車の広告をしていて、もちろんそれに不満があったわけじゃない。でもコンテストで結果を残すことができて、自分らしさはそこにあるのではと思い、自然をテーマにしたデザインをしていこうと決めました。僕はいつもクライアントと議論して、より良いデザインを作りたいと思っているのですが、その中で残っているのは、やはり自然や環境系のお仕事が多いです。

 

中村 それは大事なことですよね。自分の根元の部分と繋がった仕事ができている。BRINGには、今の地球環境に危機感を持って入社した社員が多いです。僕らにとって「豊かな自然」は当たり前でしたが、若い世代からは「このままでは自然がなくなってしまう」、「自分たちが何とかしなければ」という強い気持ちを感じています。


ハチのマークは、どんな製品に付いているの?

  1. BRINGのサプライチェーンの中で作られている。
  2. BRINGの再生ポリエステルでできた糸、生地(BRING Material™)を10%以上含んでいる。
  3. 北九州響灘工場(BRINGのリサイクル工場)で再びリサイクル可能である。

 

 

「BRING」とハチ

花の蜜を集めてくるミツバチと、消費者の衣類回収を重ねています。

消費者自身が回収拠点に足を運ぶという能動的なアクションを大事に考え、2017年、不要衣類を集める「FUKU-FUKUプロジェクト」と不要プラスチックを集める「PLA-PLUSプロジェクト」統合の際に、ブランド名「BRING」を採用。

「BRING」の中にも、「Bee」(ハチ)、「RING」(循環)の文字が隠れています。